世界は色彩に満ちている。―千住博が描き出す光と希望に満ちた鮮やかな新世界へようこそ。

2022年3月2日(水)~12月25日(日)

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新作「Waterfall on Colors」の公開

世界的にコロナ禍が続く2021年、千住博は社会に関して、アートとしての一つの表現を模索しました。それが新作「Waterfall on Colors」です。従来の漆黒の背景に描かれた滝と異なり、カラフルな色彩の背景に流れる滝。千住博が描き出す光と希望に満ちたWaterfallは、日本画の表現を超えた現代美術の一つの新世界ともいえます。

1995年に、現代美術の国際的展覧会である第46回ヴェネツィアビエンナーレで、「The Fall」の発表により、日本画として初めて名誉賞を受賞した千住博は、その後も日本画と現代美術との関係性についての様々な試みを行ってきました。本展では日本画として現代美術に挑んだ千住博の作品制作の軌跡にも焦点を当てて紹介します。

人類未曽有のパンデミックにより、私たちの住む社会からは、すっかり明るさや色彩が欠けてしまったように映ります。芸術とは、そうした何か社会から欠けてしまったものを指摘し、これまで見落としていたものの中から、解決の糸口を再発見することでその欠落を補完しようとするものであり、千住博はその補完作業を「Waterfall on Colors」において行おうとしました。つまり千住は鑑賞者に対し、絵を通して、社会に何かが欠落していると気づかせ、自らが想像力を働かせて絵と対話をすることを促し、社会の豊かさへ向けた新しいヒントを生み出す思考を始めてもらうよう促しているのです。

これまでの滝の作品ではモノトーンの(多くは黒地)背景に滝が描かれていました。一方、「Waterfall on Colors」では、様々な色彩の背景に滝が描かれています。黒地の背景の滝は、外から滝を眺めた際に見える崖の色を表したものでしたが、「Waterfall on Colors」では、黒地とは逆に、滝の内側から外の世界を覗いた構図がとられており、内側から滝を通して観た多彩な外界が表現されています。色彩は様々な事象を象徴したもので、春夏秋冬の四季の色、その四季折々に育まれる植物の色など、私たちが住む世界の色だとも呼ぶことができます。また、自然を離れて、私たちが住む社会そのものの多様な色彩を象徴したものと言えるかもしれません。そうした画家の示唆について私たちが気づくとき、私たちは自分たちが住むこの世界が、実は色彩にあふれたものであるのだと再認識できるのかもしれません。

「Waterfall on Colors」の背景に描かれた様々な色は、最後には全てが滝壺に導かれていきます。滝壺の色は、これらの色彩が全て混ぜ合わされたものなのです。千住は、世界が豊かになるヒントの一つに多様性を挙げています。残念ながら、近年の社会では多様性が失われ社会的分断が進行しているとも指摘されています。この作品には、そうした危機に警鐘を鳴らし、人々が創造性を持ち、多様性によるより豊かな社会づくりをしてほしいという作家の意図が読み取れます。

強いコンテクストが作品に埋め込まれた「Waterfall on Colors」は、現代美術作品そのものであり、日本画の第一人者の一人として第77回恩賜賞、日本芸術院賞を受賞した千住博の、その後の新しい作家活動を示唆するものかもしれません。本展では、これまで描かれてきた日本画を強く感じさせる作品と、現代アート的な作品をそれぞれの作品群として展示し、千住博が持つ現代アートとしての側面、日本画家としての側面を検証していきます。